診断前に診察してよ。
「二日前から39度の熱が続いてるんです・・」
「そうですか。ま、風邪ですね。解熱剤と抗生物質出しときますね。んじゃ、お大事に。はい、次の方どうぞ~。」
こんな医者を信用できるでしょうか。
いやいや診察してくれよ、って思いますよね。
頭痛・のどの痛み・痰・咳・鼻水など他の風邪症状は無いか、味覚・嗅覚異常は無いか、同居家族や仕事場になんらかの感染症(風邪、インフルエンザ、はしか、風疹、水疱瘡、肺炎など)に罹患している人はいなかったかの確認。
そして、触診・血液検査・尿検査やX線検査など必要な検査行い、それでも原因特定できないなら悪性腫瘍(がんなど)や薬剤アレルギー、膠原病なんかを疑い、その判定をするための追加検査を行う。
こういうステップを踏んで、原因を特定し、それに沿った治療方針を立てる。それでもその診断が不安が残るならセカンドオピニオンに頼ってもいいですよ、とアドバイス、という風に進めるのが医者の正しい振る舞いってもんでしょう。
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転じてビジネス界隈では、その診察を端折ってしまっているような場面を見聞きしなくもないし、さらにそのことが必ず非難されるわけでもなさそう。
例えば、以下のような症状が現れているとします。
商品・サービスの売上が伸びない
思うように採用できない
このような症状に対してアナタは、診察➔診断➔治療というようなステップをきちんと踏んでますか?
商品・サービスの売上が伸びない
この症状の原因として疑わなければならない領域としては、
そもそも市場のニーズはあるか
競合に比して差別化はできているか
品質そのものに問題はないか
価格・料金設定に問題はないか
顧客サービスに問題はないか
購買意欲を喚起する魅力はあるか
商品・サービスの存在が認知されているか
販売チャネルは適切か
ターゲット設定は適切か
サプライチェーンに問題はないか
のようなことがザッと書き出しただけでも挙げられる。
これらを網羅的に評価・分析した結果を踏まえてなんらかの診断を下す、というプロセスを経てようやく売上が伸びないという症状への最も適切な治療方法を捻り出せるはず。
このプロセスを端折ってしまい、ろくな診察もせずに、
「その原因は、売上が伸びないのはプロモーションがうまくやれておらず、認知度が低いからだ。」
という診断を下し、
「なので、もっと広告宣伝費を投下し、認知度を高めるべきだ。」
という治療方法を採ることを決断し実行したとする。
ロクな診察をしていないので、誤った診断・誤った治療方法となってしまう可能性はどうしても高くなってしまう。
本当の原因が「顧客の購買意欲を書き立てるような魅力的な商品・サービスではない」、だったとする。
この場合、「魅力的でない商品・サービスを多額の広告宣伝費をかけて、その存在を広めてしまう」ことになり、そのような商品・サービスを販売している企業としてレッテルを貼られてしまうことになる。
また本当の原因が「商品・サービス自体は魅力的だが、品質に問題がある」だとする。
この場合も、品質に問題がある商品・サービスが市場に溢れることを助長してしまい、信用・信頼が失墜してしまい、その後の事業継続が危うくなってしまうことにもなりかねない。
思うように採用できない
この症状の原因として疑うべきなのは以下。
求職者に企業のブランドや魅力が伝わっているか
求職者にそのブランドやカルチャーが魅力的に映っているか
競合他社と比較して待遇は劣っていないか
採用情報を発信しているチャネルは適切か
求人内容や募集要項に不明確さはないか
採用プロセスが複雑で求職者の意欲を下げてしまっていないか
採用ターゲットを狭めすぎていないか
このようなポイントを評価・分析することが診察。それを端折ってしまって、
「もっと採用費を投下してさっさと求職者の目に触れるようにすべき」
という診断を下してしまったとする。
でも、本当の原因が「企業のブランドやカルチャーに魅力がない」「待遇面で他社のほうが良い」というものだったとする。
この場合、先の例と同じく多額の費用を投下して「魅力が低く、待遇面も良くない会社」であることを世の中に知らしめてしまうことになる。
それでも、そこで働きたいという求職者はいるだろうが、その求職者が会社にジョインして欲しいスペックを有した求職者である可能性は低い(なぜなら、そういう求職者は当然、より魅力があって待遇も良い会社を選ぶだろうから)。
まず注力すべきは、
会社の魅力をきちんと発信できるようになること
魅力を把握・認識できてないなら、把握・認識すること
そもそも魅力がなさそうなら作る努力をすること
待遇を競争力あるものにすること
すぐに待遇を良くすることが難しいなら、良いと感じてもらえる工夫をすること
採用プロセスの適正化を図ること
などであって、これらに対処してようやく「ウチの会社に来てください!」と、自信をもって求職者に対して情報発信する状態が整うのだと思う(まあ現実的にはその取り組みの完了を待ってから求人活動を開始、というわけにはいかないだろうから、せめて同時平行で)。
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診察を端折るとかヤブ医者のような振る舞いで災いを呼び込むことにならないように、
「診察➔診断➔治療」
のプロセスを脳に身体に浸み込ませておきたいよね。
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