不条理が道理なボクらの世界
日本:ほぼ100%
アメリカ:53%
ヨーロッパ:ほぼ無名
さくっとググってみたところ、その地域ごとの成人が、どの程度大谷翔平を認知しているか?の程度はこうらしい。原文は日本語で書き散らかしているこのブログの読者は、その「ほぼ100%」が大谷翔平を認知していそうなので(ほんとかよ・・)、遠慮なく彼を絡めた内容で先に進みたいと思います。
ボクはサンディエゴパドレスの(それほど熱狂的ではない)ファンだ。そんなに頻繁ではなかったが、過去には時間が許せばPETCOパークに足を運んで観戦することもあった。2018年、パドレスvs.アナハイムエンゼルスの試合で初めて大谷翔平を目にした。ボクはどうも、異世界で活躍する日本人を無条件で応援したくなる性分のようなのだが、この人に関してはそのレベルを超えてきて、「なんじゃコイツは・・」と一瞬で魅せられた。なんだろう、うまく言えないけど、ひとりだけ属性が違うチートキャラ、スーパーサイヤ人が纏うオーラのようなものが見えてしまったのだ。
それ以来、ロサンゼルスドジャースに移籍してからも続く彼の大活躍に興奮させてもらってきたが、先日その想いがプシューッとボクの中から漏れ出してしまった。。故障によりずっと欠場しているドジャース正捕手:ウィル・スミスの代わりにそのポジションを守り続けているダルトン・ラッシングと、大谷とのやりとりの場面がきっかけ。
その要点はこうだ。
・大谷が投げる急激に変化するスイーパーやシンカー、100マイルを超える速球、それをうまくキャッチできないラッシング
・主審の「ボール」判定に対して、大谷がABSチャレンジ(システムによる判定結果を照会)を主張するも、ラッシングは「いや、ボールだった。だからチャレンジは不要」というモーションでそれを否定したが、チャレンジしてみると大谷の主張通りストライクだった
・これらが重なり、大谷がラッシングに対して強烈な不満や苛立ちを露わにした。
ちなみにラッシングはデビュー2年目のルーキー。
そりゃ世界最高峰のベースボールリーグに所属するプレイヤーたち。ボクのようなパンピーには想像もできないほど高い高いプロフェッショナリズムと誇りを持ってプレイしているわけだし、だからこそ少しのミスも許されない、ってことはなんとなく感じ取れる。
だけど、だけどね――(もちろん世界最高峰の真剣勝負ゆえの熱量であり、あの超次元レベルだからこそ必要なやり取りだと分かった上で、あえてビジネスのメガネで斜めに見るなら)――ボクが属するビジネスの世界で例えるなら、超エリート社員が、その部下として入社してきた新入社員のミスに対して「おい、なーんでこんなことできねんだよ?」と、相手の立場や目線に合わせることなく、感情剥き出しに問い詰めているようなシーンが重なって見えてしまったのだ。
いや、もう一度言うけど「世界」が違うってことはわかってますよ?それでもさ、その試合の前に入念にふたりで練習とか確認、十分にしたんですか?とか、もしかしてそれもやってないのにキレちゃったんですか?とか、相手は新人なんだからも少し振る舞いに気を遣うとかあるんじゃないんですか?とかさ。ボクに事実がわかるわけはない。ただ画面に映されたシーンから、ボクはそう感じてしまったのだ。ずいぶんと長い間人格者として振る舞ってきた彼だから余計に。
というMLBのような世界では「アリ」なのかもしれないが、ボクらのビジネスの世界では「ナシでしょー」というシーンとして書き出してみた。
ここからは反転術式で視点を変えて、ビジネスの世界では「あるある」だけど、それをMLBの世界に持ち込んだら「こんな不条理に見えちゃう」なシーンをいくつか挙げてみようと思う。
そうやって、自分たちの世界を違う視点から見つめ直すことで、「あれ?もしかしてボクらの組織ってヤヴァい?」とか「なんか違ってたかも・・」みたいに何が本来の道理だったか、の気付きがあるかもしれないし。
ーーー
1. それ、本当にルールなんですか?
ボクらの世界のあるある
部長: 「来期から通勤交通費の上限を変更することになった、と人事部から連絡があった。これまで3万円/月だったが5万円/月に変わるようだ。」
ボク: 「え、マジっすか?やった!ボクの場合月に4万円かかってて実質1万円持ち出しだったんで助かりますー。」
〜半年後〜
ボク: 「通勤交通費の上限、5万円/月に変わってほんとに助かったわ~」
XXさん: 「それで言うと、オレ、7万円もらってるよ。新幹線通勤許してもらってるから。」
ボク 「は?なんで?上限超えてるじゃん。ルール変わったのかな・・あ、部長!なんでXXさんは上限超えててOKなんですか?」
部長: 「あーそれね。ほら、XXくんはチョー頑張ってるから。特別に新幹線通勤許可したんだよ。キミもXXくんを見習って頑張ってよ!」
部下B: 「・・・。」
MLBの世界に置き換えてみると・・
MLB: 「デーヴ(ロバーツ監督)、大谷の二刀流をサポートするためにルールを変更したよ。先発投手として降板した後も、DHとしてそのまま打線に残り続けられることにした。」
ロバーツ監督: 「え、マジっすか?わっかりました!MLBがもっと発展するように尽力します!」
〜半年後〜
ロバーツ監督: 「いやあ、大谷ルール、本当に助かるわ~。先発投手でありながらバッターとしても残って活躍してもらえるからねぇ。」
ブーン監督: 「それで言うと、ウチのジャッジは4ストライクじゃないとアウトにならないってルールになったよ。」
ロバーツ監督: 「は?なんで?そんなルールありえなくない?あ、MLBのお偉いさん、なんでジャッジだけ4ストライクでアウトなんてルールなんですか?」
MLB: 「あーそれね。ほら、ジャッジは人一倍スゴイから。特別にそういうルールにしたんだよね。ドジャースのみんなもさ、ジャッジ見習って頑張ってよ!」
ロバーツ監督: 「・・・。」
*現実のMLBでは:
「大谷ルール」は、条件を満たす全選手に一律適用される制度であって、大谷個人に向けた特別ルールではない。特定の個人だけに適用される「ジャッジ限定ルール」のような、評価や忖度による二重基準(ダブルスタンダード)は絶対にあり得ない。
💡 教訓:一旦決めたルールは守れや。状況や周辺環境の変化により、ルール自体が馴染まなくなったら、ルール自体を変えろや。
2. 任せてくれるって言ったじゃん
ボクらの世界のあるある
部長: 「あのさ、今後マーケティングに関する投資については100万円まではキミが全て判断していいことになったから。」
ボク: 「え?そうなんですか?わっかりました!マーケティングに関しては任せてください!会社がもっと良くなるように尽力します!」
〜半年後〜
部長: 「ねぇ、XXさんから聞いたんだけどさ、50万円のマーケティング投資決めたんだって?小さい額じゃないんだから事前にボクに話を通してもらわないと困るよ。一旦却下するから。」
ボク: 「え?でも100万円まではボクが判断していいということになった、って部長、おっしゃってましたよね?」
部長: 「確かに言ったよ。でもさ、どんなことでもフレキシブルに対応してもらわなきゃ困るよ。」
ボク: 「・・・。」
MLBの世界に置き換えてみると・・
ロバーツ監督: 「ショーヘイ、今後出塁した後に盗塁するかしないかの判断は全部自分で決めていいから。」
大谷: 「いいんスか?わーそれ、めっちゃやりやすくなります!もし盗塁失敗しても怒んないでくださいよ〜っ」
ロバーツ監督: 「もうショーヘイに任せたんだから怒るわけないだろー。ちゃんと考えて判断するんだぞっ。」
大谷: 「イエッサー!」
〜半年後〜
ロバーツ監督: 「ショーヘイ!なんだよさっきの盗塁は!あんなシーンで走るべきじゃないだろっ!」
大谷: 「え?あ、いやイケると思ったんで・・」
ロバーツ監督: 「勝手に決めるな!走るか走らないかはオレかコーチのサインをみてもらわないと話にならんっ!」
大谷: 「つか、自分で判断していい、って言いましたよね?」
ロバーツ監督: 「言ったよ!言ったけど、どんなことでもフレキシブルに対応してもらわなきゃダメだろ!」
大谷: 「・・・。」
*現実のMLBでは:
実際は「グリーンライト」という明確な戦術指示。権限を与えた以上、失敗した責任はベンチ側が負うべき。後出しで「察してフレキシブルに対応しろ」と理不尽にハシゴを外すことなんてあり得ない。
💡 教訓:一旦任せたら信じろや。
3. 本当にボクの上司なんですか?
ボクらの世界のあるある
ボク: 「先月の実績を報告します。予算に対して、実績は15%未達でした。」
役員: 「15%は大きいねぇ。何が原因だと分析してるの?」
ボク: 「予定していたマーケティング施策の実行が2ヶ月遅れてしまったことが原因かもしれません・・」
部長: 「予定通り実施するように言ったんですけどね。ボクがもっときちんと見ておくべきでした。」
役員: 「巻き返しの施策を頼むよ。」
〜会議後〜
ボク: 「マーケティング施策を遅らせる指示をしたのは部長ですよね?責任回避するのはズルくないですか?如何にもボクの動きが悪くて遅れてしまったみたいじゃないですか。」
部長: 「いやあごめんごめん。まあさ、ああいう場だからさ、なんというか流れで。役員にはうまく補足説明しておくから。巻き返しの施策、よろしくね。ね?」
ボク: 「・・・。」
MLBの世界に置き換えてみると・・
コーチ陣: 「今期ここまでの実績はご存知の通りですが、想定外に故障者の数が多く、そのカバーリングが困難な状況でして。。」
フロントオフィス: 「故障者の数が多い。その原因は何だと分析してる?」
コーチ陣: 「練習メニューの設計を各選手とそのトレーナーに一任していて、その内容を把握していませんでした。負荷が比較的高めのメニューをこなしている選手に故障傾向が高いです。」
フロントオフィス: 「各選手のメニュー内容を把握してないなんてありえないでしょ。どういうこと?」
ロバーツ監督: 「いや、各コーチにはちゃんと把握した上でコーチングプランを立てるように指示してたんですけどね。。指導しておきます。」
フロントオフィス: 「故障は損失が大きいから、その発生を最小化できるように頼んだよ。」
〜MTG後〜
コーチ陣: 「練習メニューなんか各選手に任せろ!って言ったの監督じゃないですか!」
ロバーツ監督: 「いやあごめんごめん。まあ、ああいう場だからさ、なんというか流れで。フロントにはあとで補足説明しておくからさ。今後の対応、よろしくね。ね?」
コーチ陣: 「・・・。」
*現実のMLBでは:
実際はフロントと現場で方針やデータ(Alignment)が完全に共有されていて、ごまかしは効かない。また、監督の最優先事項は「コーチや選手の防波堤になること」であって、保身のために部下に罪をなすりつけるような真似をすれば一発で解任対象となってしまう。
💡 教訓:自分の判断は自分で責任持てや。部下をきちんとサポートしろや。
4. その目標達成したらどうなるの?
ボクらの世界のあるある
部長: 「今期は売上規模100億円到達を目指す、という方針が経営チームから示された。我々の部門は30億円だ。」
ボク: 「わかりました。でも部長、100億円到達したら何がどう変わるんですかね。ボクらの仕事環境とか給与とかどう変わるんですかっ?そういうの知っときたいなー。ウチのチームメンバーのモチベーションにも影響大きいですし。」
部長: 「そんなことは知らん。とにかく我々は30億円の目標をクリアすればいいんだよ!」
ボク: 「・・・。」
MLBの世界に置き換えてみると・・
ロバーツ監督: 「今シーズンは90勝を目指す、という方針がマネジメントチームから示されたぞ!みんなそれに向けてトレーニングと準備を怠らないように。」
大谷: 「わかりました。でもドク、90勝の目標をクリアしたら何がどう変わるんですかね?ボクらの移動手段とか休暇とかボーナスとかどう変わるんですか?」
ロバーツ監督: 「んなことは知らん。とにかく我々は90勝の目標をクリアすればいいんだよ!」
大谷: 「・・・。」
*現実のMLBでは:
実際は労使協定[CBA]や個人契約で、移動手段からホテルのランク、勝利やタイトルに伴う条件までミリ単位で細かく定められている。
💡 教訓:頼むから具体的なビジョンを見せてくれ。
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「ボクらの世界あるある」として記したものは全て、ビジネスの世界では文字通りあるあるで、それを見聞きしたからといって特段騒ぎ立てるようなレベルの出来事として取り扱われることもない。
ただ、こうして外の世界(業界)でそれが起きたら?と妄想してみるだけで、如何にそのことが不条理であるかがクッキリと輪郭を表してくる。
MLBが機能しているのは、単に契約やルールが厳しいからではない。『勝利という共通のビジョン』に対してフロントも現場も完全にアラインし、お互いをプロとしてリスペクトしているからなのだろう。システムを整えることは大前提として、その根本にある『何のためにこの組織にいるのか』という共通の想い(パーパス)を欠いたままルールや契約だけで縛ろうとするから、ビジネスの現場はコントのような理不尽で溢れかえってしまう。
これは文化や慣習の違いで片付けられるような類のものではない。ビジネスの世界だろうがなんだろうが、この世の全てを貫く倫理として捉え直した上で、自分自身もそれに沿った言動をとれているか——自戒を込めて記しておこう。
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